北斗が如く
2018年3月8日
『北斗が如く』クリア後の感想です。ネタバレなしです。
失敗作か!?
龍が如くシリーズはこれまで20~30万本の売り上げを記録していましたが今作は12万本ということで「失敗作」「シリーズ自体がオワコン」などのネガティブなワードがネット上で見受けられます。
果たして本当にそうなのか?
私の率直な感想は「おもしろい」です。
龍が如くシリーズは『クロヒョウ2』と最新作『極2』以外はすべてプレイしていますが、これまでのスピンオフ作品と比べても遜色ない出来だと思うし個人的には歴代でも上位に入るくらいやり込みました。
前作『龍が如く6』も批判は多く、このブログではそういった批判に反論しましたが今作に対する批判は的を得ていると感じるし、前作のものに比べると大分深刻なもののように思えます。
シリーズの良さを生かし切れていない?
龍が如くをよく表す「ヤクザファンタジー」というワードがあります。おそらくネットのユーザーから出た言葉だと思いますが言い得て妙ですよね。
「強すぎる主人公」「人も実際はあんまり死んでない」など、リアリティの欠けたいかにもゲームっぽい世界なのですが、実在する街・店舗や有名な役者の起用にビッグアーティストによる主題歌などによって現実との親和性を得ることに成功しています。
こういった試みはこのシリーズのオリジナリティの根幹であり作品に唯一無二の魅力を与えています。
宣伝を狙った表面的・広告的なコンセプトなのですが、それによって普段ゲームをあまり遊ばない一般層にアピールすることにも成功しているし、ゲーム自体の丁寧な作りもコアユーザーに「ネタゲー」として楽しませる魅力があります。
リリース期間の短さや役者の確保など、ファンを飽きさせない努力は相当なものだしそういった「側(ガワ)」も含めて『龍が如く』なんですよね。
今作『北斗が如く』での試みも人気漫画『北斗の拳』の世界と『龍が如く』の世界が混ざり合うというコンセプトのもとに作られているんですけど、これって「虚構」と「虚構」ですよね。
これによってどうなったかというと、「ただのキャラゲーの正面衝突」のようなものになってしまったのではと。
過去のスピンオフである『維新』『見参』にしてもストーリーはめちゃくちゃなんですが時代劇の舞台自体はかなり丁寧に作られていて、このシリーズにおける「観光の楽しさ」はしっかりと守られていました。
『OF THE END』では『龍が如く』とゾンビとのコラボでしたが、こちらはおなじみの神室町がゾンビウイルスに感染するといった内容で、面白さはともかくシリーズとしてのセオリーは守られていました。
『北斗が如く』を今までのセオリーでブレずに作るとしたら「荒廃した世紀末の神室町にケンシロウが現れる」になるはずなんですけど、そうはなっていません。
実際のこのゲームは声優とゲームシステムが『龍が如く』で、ストーリーはオリジナルです。
ものすごく特殊なゲームになってしまっていて、この世界観をユーザーに納得させるにはゲームの序盤にかなり手の込んだギミックを用いる必要があると思いますが、今作はそれらを完全に放棄しています。
『北斗が如く』の失敗は、今までのセオリーを守りもせず新しい挑戦を乗り越える手間も省いてしまったことにあるのではないかと。
進めていくと、このゲームがいかに丁寧に作られているかわかるし、豊富すぎる(それでいて面白い)サブクエストをやり込むことで独自の世界観を把握でき、深みすら感じます。
だけど、そこまで辿り着く人が多くいるとは思えません。
序盤で脱落者続出!!
ネットのレビューを見ていると序盤でやめてしまう人が多いように思えます。私の友人も「後半は早く終わらせたくてサブクエなんてやってない」と言っていました。
さらに言えば発売の約2週間前に配信された体験版の評判が非常に悪かったです。
私も体験版をプレイしたのですが、とても面白いと思える代物ではありませんでした。
体験版では狭い部屋で雑魚キャラをいっぱい倒して北斗神拳が発動するのを体験することが出来るのですが、めちゃくちゃ弱い雑魚キャラ一人倒すだけでもとどめを刺すときには必ず「あたたたたたーーーあたーーーー」(ちょっとためて)「北斗 百裂拳!」とやるので体験版なのに途中で飽きました。
まさか製品版でもこれ飛ばせないのか!?という不安だけをユーザーに与えてしまった悪い体験版でした。
実際製品版でも北斗神拳のアクションムービーは飛ばすことが出来ず、これもユーザーを序盤でうんざりさせてしまう大きな要素です。
中盤ケンシロウを成長させていくとかなり短縮できるのですが、序盤で飽き飽きしてレベル上げなんてやってられないという方は最後まで苦痛でしかないでしょう。
難易度ノーマルでもストーリーを進めるだけならレベル上げなんてあまりやる必要もないですし。
序盤にうんざりする要素として最も大きいのがストーリーです。上にも書きましたが今作の特殊な設定をプレイヤーに納得させるためには序盤にかなりの仕掛けを施さなければならないのですが、今作はそれを放棄して第5章くらいまで一本道のストーリーを延々とやらされる事になります。
内容はいつもの龍が如くシリーズ的なものなのですが、桐生一馬というフィルターがなく、さらに北斗の拳のオリジナル要素も削ってしまったことによってシナリオの粗が前面に表出してしまいました。
もともとこのシリーズ自体ストーリーがそこまで面白いとは思わないのですが、キャラクターや役者の使い方など他の要素で十分カバーできていたと思います。
でも書いている人は自信が相当あるのか(なきゃ困りますが)中盤までストーリーのみで引っ張れると踏んだのでしょう。
無茶な話です。
この暴挙によってこのゲームの実際はそんなに気にならない粗などが連続して襲い掛かってきてゲーム全体に「なんかしょぼい」という印象を強烈に焼き付けてしまっています。
2018年のゲームとは思えない粗い地面のグラフィック。
バギーに乗って荒野を探索していると様々な発見があり、よく作られていて面白くこのような粗も気にならないのですが、ストーリーだけを進めていくとお使い的に数回移動する程度しか荒野へ行かないのでこのような粗ばかりが目につきます。
このゲームで本当に残念なのが、序盤のプレイヤーを導く導線の引き方が駄目駄目な所です。やはり中盤までのプレイで面白さを感じなければゲームをやめてしまったり、やっつけで後半は全力疾走してサブクエまでやり込んだりしませんよね。
ケーーーーーーン!!!
ケーーーンケーーーンケーーーーン!!!
『北斗が如く』のストーリーはオリジナルなのでバットやリンといったおなじみのキャラはあまり絡んできません。
ですが何故か需要のあるロリ枠にリン(CV:釘宮理恵)のサブクエストがあります。
『維新』の遥のクエストと全く同じで、リンが必要としているアイテムを与えて転売してもらうといった内容なのですが、ちょっとした嫌がらせになっていて絶句しました。
リンの友好レベルが上がるたびに「緊急依頼」という時間制限付きの特別な依頼があるのですが、そこで必要とされるアイテムを手に入れるためには他のミニゲームの高難易度をクリアしないと手に入らないものがあります。
「旧世界の機械」という注文を受けたのですが、これを手に入れるにはデスバッティングというミニゲームで最高難易度のB級のスコアを出すかコロセウムというバトル系のミニゲームでLEVEL54の敵を倒すしかありません。
まずコロセウムの敵ですが、こんなもんクリア後しか倒せません。
中盤リンのクエストを受けた時点では全く歯が立ちません。
デスバッティングも相当難しく、3時間ぶっ続けでやりましたがクリアできませんでした。
仕方ないので攻略サイトを見ると「奇跡のバット」という装備を手に入れることで楽になるようですが、そもそもこの「奇跡のバット」自体もコロセウムの報酬で入手困難です。
しかもバットの種類はこれ一個だけ。
仕方ないので装備なしで何とかクリアしましたが、このクエストだけ単体で楽しめないことにとても理不尽さを感じました。
私の想像ですが、前作『龍が如く6』で一部のファンから澤村遥のストーリー上の扱いに対する批判が多かったことへの開発者の復讐のような気がしてなりません。
せっかくサブクエストが豊富で面白いのに。このゲームの良さでもある「興味のあるものだけやっても楽しめる」というのがぶち壊しです。
もう本当に、こんなことは二度とやめていただきたい!!!
序盤のストーリーには目を瞑ってもらってサブクエストを楽しんでほしいという私の主張もリンのせいで揺らぎます。
ストーリーも後半にかけていつものように盛り上がるかと思いきや8章が信じられないくらいつまらないです。
8章は原作キャラの「ジャギ」の章なのですが、サブクエ以下の酷いお使いを延々とやらされた挙句のクイズ大会。
ラストの戦闘では何故か一人称の戦闘を結構長時間やらされた挙句後半は通常の戦闘もやらなくてはならないという謎仕様。
このゲーム、全体的にこの8章のような作りにしていれば伝説のクソゲーになれたかもしれません。惜しい!!!
良い点と悪い点を上げれば他のシリーズよりも勝るのですが、悪い部分の突出の仕方が今までにない種類のものでシリーズの今後に対する不安が高まります。
出し惜しみしないでほしい
このゲームの舞台となるエデンの街にもシリーズおなじみのゲームセンターがあります。
しかし肝心のゲーム機体はないのでゲームは自分で取ってこなければなりません。
ゲームを手に入れるためには雑魚キャラをいっぱい倒して手に入れた「宝の地図」を頼りに荒野を走り回って探します。
手に入れた時の喜びはひとしお。
龍が如くシリーズでは毎回ゲームセンターにセガのゲームがあってプレイできるのですが、そこに探索とコンプ要素を入れたのはとても良いと思いました。
機体を手に入れていくごとに次の機体を手に入れたいと思うし、最後にはセガマークⅢを手に入れてマークⅢ版の『北斗の拳』を自宅でプレイすることが出来ます。
こういった、今までのシリーズからよりブラッシュアップされて面白くなった部分がたくさんある反面、出し惜しみしていると思う部分もあります。
『北斗が如く』の製品には通常版(8390円)と『世紀末プレミアムエディション』(11390円)が存在します。
プレミアムエディションの方には様々な特典が付いているのですが、発売から4か月経った今でもその中からPSストアで買えるものがオリジナルテーマしかありません。
他にどのようなものがあるのかというと、ケンシロウの姿を桐生一馬にできる権利やBGMをアニメで使われていたものに変えることが出来る権利などです。
3000円多く払ったのだからプレミアムエディションを買った人が先にこれらの権利を享受出来るのは納得できるのですが、1週間後くらいにダウンロード販売してもよくないですか?
通常版を買ったけど思いのほかハマって追加コンテンツが欲しくなる人も私を含めてたくさんいたと思います。
桐生一馬になれるとか、クリスタルキングをBGMにして遊べるなんて最高じゃないですか。なんでそれを売らないんでしょうか?
正直このやり方には納得がいきません。
いろいろ書いたけどおもしろいです!
いままで『龍が如く』をシリーズを通してずっとやってきたわけですが、多少飽きた時期もあったけれど、基本何も不満も感じないまま頭を空っぽにして楽しませてもらってきました。
今作『北斗が如く』にはすごく複雑な気持ちがあって、それを解きほぐすことに長文を要してしまいました。
ほとんどのサブクエストと全てのミニゲームを遊びましたが全体的に完成度が高く面白いゲームです。
ネタバレになるからあまり書けませんが、黒服(キャバつく)はあいかわらずよく出来ていて店の女の子のストーリーも面白かったです。
バーでのカクテル作りも単純で笑えるし、やり続けると街中の人がお客さんとして来てくれてお店の商品を割引してくれたり小さなドラマがあったり最高でした。
もう一つお薦めなのが「賞金首ハンター」です。当初はただの金策かと思っていたのですが、進めていくうちにミステリードラマのような展開になるので是非やってみて下さい。
やり込みしつつ進めていってクリアする頃には「もっとここ(エデン)にいたい!」という気持ちになりました。
龍が如くファンなら是非やってほしいゲーム。
『北斗が如く』、お薦めのゲームです!!!