ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム
Deck Nine Games
2018年6月7日(日本語版)
PlayStation 4、 Xbox One、 Microsoft Windows
『Life Is Strange』の3年前、16歳のクロエとレイチェルの友情を描く前日譚。
未来は変えられない
今作に限ってはネタバレも何もあったもんじゃない。私たちは3年後のクロエとレイチェルがどうなっているか知っているのである。
そしてその後のクロエがどうなるかも・・・。
プレイヤーはクロエを操作してゲームを進めるわけだが、すぐに自分が何も変えることが出来ない事に気が付いて無力感を味わうことになる。
前作のように時間を巻き戻す能力もない。
選択肢はいくつも出てくるけど、どういう選択をしようがクロエとレイチェルの仲は深まるばかりだ。
何も変わらない。
前作を知っている俯瞰的な目で見れば、彼女たちは急勾配の坂を転がり落ちていくばかりで私達プレイヤーはかろうじて触れることはできても止めることが出来ない。
これが映画と違うところはこの「かろうじて触れている」という感触。
プレイヤーがいくらクロエの手をつかんで違う未来に導こうとしても彼女はその手を振りほどいて「あの3年後」へ全力疾走するばかりだ。
クロエが母親や義父の手を振り切ったように。
プレイヤーはある瞬間からクロエと手をつなぎながらも彼女をコントロールすることをあきらめるだろう。
父の存在と友情
クロエもレイチェルも高校の同級生たちも、みんな父親という存在に縛られている。
まるで呪いだ。
クロエとレイチェルはアルカディア・ベイという街を捨てることでその呪いが解けると信じている。
自分という存在を全肯定してくれて守ってくれる父親の不在。
そんな父親の秘密や嘘を疑っては思い悩む。
でもそんなクロエが最後の最後にはレイチェルのために大きな嘘をつかなければならない選択を迫られる。
どちらを選んだにせよクロエは何かを背負い込んで大人になっていく。
自分がレイチェルを守る存在になりたいから。
だがそんな友情が他人の手によってめちゃくちゃに破壊される未来も変えることが出来ない決定事項なのだ。
ボーナスエピソード:さよなら
ここではさらに時間を巻き戻しマックスが引っ越す日の出来事が綴られる。
意外な事実も知れるので是非プレイしてほしい。
マックスはクロエをパンク少女扱いするけど、ユースカルチャーに影響されてネットにもどっぷり浸かっているマックスの偏見にも思える。
クロエは辛い現実に連続で晒されながらもまっすぐ生きようとしていて、それでいて誰にも触れることが出来ないような純粋さがあって見ていて苦しくなる。
今回のストーリーのどうしようもなさはクロエのまっすぐな性格そのもので、前作のマックスには他者の考えを取り入れたり良い意味でも悪い意味でも空気を読む柔軟さがあるので選択肢の幅が広がっていたように思う。
『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』は前作の成功とクロエというキャラがあってこその独特で類稀なゲームに仕上がっている。
それは重くて弱くて歪な形ではあるが前作のファンが共通して持つ世界観を補完したというその一点だけでも価値のある作品になった。
俺と一緒に
砦まで歩いて
海が段ボールで
できてるかどうか確かめよう
血とターペンタインの空気を感じる
こころのなかである種の変化が起こる
君がこの街で見る唯一の存在になりたい
本当かどうかわからない
君がそれに値するかどうかわからない
君なのかどうかわからない
俺はこの身を捧げようとする
本当かどうかわからない
だけど復活祭の日には帰ってくるよ
君がこの街で見る唯一の存在になりたいから
太陽が君の目にさし
君の船は沈んでいく
一億匹のハエが
俺の考えてることを知っている
血とターペンタインでハイになり
あのサルが後ろから君を襲うのを見つめる
君がこの街で見る唯一の存在になりたい
(MazarineStreet-BonesAway)