ゲンロン8 ゲームの時代
株式会社ゲンロン
2018年6月7日
哲学者の東浩紀氏による批評誌『ゲンロン』のゲーム特集。
いち早く本書を読みたかったのでゲンロン友の会というものに入って入手しました。
ですのでゲンロン誌自体に馴染みがなく相当に難解な展開を覚悟して読んだのですが杞憂でした。
まず冒頭の共同討議「メディアミックスからパチンコへ」では91年から現在に至る日本のゲーム史を具体的な作品を挙げながら総括していてわかりやすかったです。
ゲームに常に注目していてある程度プレイしている人にとってはあまり新鮮さはないかもしれませんが、実際にプロの批評家の言葉で語られることによって問題点が見えやすくなり頭がすっきりしました。
補遺ではゲームの外側の生身や環境にまで話が飛んでいて面白かったです。
さやわか氏による論考「ボタンの原理とゲームの倫理」ではそこからさらに任天堂が何故switchであのようなコントローラーの形状を採用したか、ボタンによる反応とコミュニケーションの考察等、ゲーマーであるほど逆に見過ごしやすい問題を取り上げていて目から鱗でした。
ローカライズ事業に携わっているスペイン人のイバイ・アメストイ氏へのインタビューは、日本にあこがれて日本で仕事をしている人から見た現在の日本のゲームに対する意見がかなりストレートに語られていて耳が痛いですが、この記事こそ日本のゲーム開発者・ユーザーに是非読んでほしいです。
現在の日本のゲームの質が落ちた理由は、ゲーム側がユーザーの質に大きく引っ張られすぎてガラパゴス化してしまったという一面があるかと思います。
ではなぜそうなってしまったのか?という問いに本書はかなり答えてくれます。
個人的に加点減点方式のレビューは購買の指針にはなるけれど、そればかりではツマラナイので本書のような批評はもっとたくさん読みたいです。
あとこの本はゲームを全くやったことのない人にも読まれるのが良いですね。
付属の年表に載っているゲームをつまんでいくだけでもかなり刺激になると思います。
昔から「映画や小説に詳しい人のゲームの感想が聞きたい!」と思っていたので本書によってそういった広がりが出来ることにも期待したいです。