Hyper Light Drifter
2016年
PlayStation 4、 Xbox One、 Microsoft Windows、 Linux、 Mac OS、 Ouya
今作の主人公は不治の病にかかっていて、治療法を探すためにドリフター(放浪者)となって古い遺跡のある島(忘れられた島)を探索します。
ストーリーには謎が多く、考察するのも楽しそうですが私はまずこのゲームの感触に感動し、入れ込んでしまいました。
宣伝の謳い文句には「懐かしのドット絵」のような表現も使われていますが、実際プレイしてみると懐かしさよりも新しさのほうが大きく感じられます。
懐かしさという表現も当てはまらないこともないのですが、レトロゲームファンを意識しているというよりは表現としてドット絵を採用しているように思えます。
アンビエントなBGMとも相まって非常に幻想的な感触を視覚・操作と共に体感することが出来ます。
ゼルダの伝説がもたらしたもう一つの未来
私がゲームに興味を持った一つの理由に、技術の進化とともに新しい発想が生まれるんじゃないかというワクワクがありました。
ゲームを作るコンピューターの進化にクリエイターが常に新しい発想を提示していくことによって予測のつかない遊びや表現が生まれるんじゃないかという期待。
しかしゲームの歴史も長いので、長く続いているシリーズ作品というのはこういった技術の進化によって作品の根本的な良さやファンに愛されている要素を失っていくというリスクをはらんでいます。
2017年に発売されたゼルダの新作『ブレスオブザワイルド』ではそれまでのシリーズの定石を覆すような仕様にオープンワールドという大胆な変化にもかかわらず往年のファンを納得させるという偉業を成し遂げてしまいました。
しかもこれが一回目じゃなくて64時代の『時のオカリナ』でも成功させているわけですから凄いシリーズなんですよね。
これはゼルダの伝説というゲームが、どんな時代においてもプレイヤーが発見したりキャラクターを動かす喜びというゲームで得られる根源的な快楽を最新の技術を使いながらも丁寧に紡いできたからに他ならないのだと思います。
『Hyper Light Drifter』はインディーゲームなんですが、インディーゲームというのはある程度技術の進化から距離を置いた場所に存在していることが許されているんですよね。
玉石混交な世界ではありますが、今作は長い時間と予算をかけて制作されていることもありゲームとしては一級品。
ゲーム性はもう完全にゼルダを意識して作られているのですが、おそらくドット絵にこだわっていることも含めてファミコンのゼルダ1作目やスーパーファミコン『神々のトライフォース』を強く意識して作られているのでしょう。
しかし今作はただのゼルダオマージュに留まらずに独自の進化を遂げています。
ファミコン・スーパーファミコンの時代ではたどり着けなかったドット絵の新しい表現・進化に加えて操作のスピード感やマップ移動のストレスからの解放など。
それによって何が起こったかというと、私自身このゲームをしばらくプレイしていて自分自身の感覚を疑ったほどですが、『ブレスオブザワイルド』をプレイしているような錯覚に陥ってしまいました。
たくさんの遺跡を巡り謎を解いて世界を放浪する。
その発見の喜びや、感じられる広さなどは間違いなく『ブレスオブザワイルド』で得た感動と一緒でした。
『時のオカリナ』とも、携帯機で出た初期作に近い作りのゼルダとも全く違う感触。
『ブレスオブザワイルド』としか例えようがないのです。
ドット絵のゼルダを独自に進化させて『ブレスオブザワイルド』に近いものが出来てしまうとは・・・。
いかにゼルダの初期設計が完璧だったかということも思い知らされましたし、それらを完全に理解して今作を作った制作者にも脱帽です。
『ブレスオブザワイルド』云々というのは私の個人的な感想・感動ですが、今作『Hyper Light Drifter』は決して古臭くなく、新しい体験をプレイヤーにもたらしてくれる傑作であることには間違いありません。
是非プレイしてみて下さい!!!